2回目のゲストの佐々木さんは、旭区生まれ。現在は港北区に暮らしています。大企業でお仕事をしながら、精神障害の方たちをサポートするNPO法人都筑ハーベストの会の理事長をされています。なぜNPOを立ち上げ、理事長をするまでなったのか、どこからそんな時間を生み出して活動しているのでしょうか。じっくり、お話を聞きました。

『精神科医になりたい!からNPOを立ち上げるまで』
大学が文系で、すでに会社勤めをしていたのですが、ある本がきっかけで、精神科の医者という職業に憧れ、なりたいなと思いました。当時精神分裂病といわれる人と接したいとの思いから、土曜・日曜に精神科の病院でボランティアも考えているなかで、偶然、横浜駅西口のボランティアセンターに行ったところ、小規模作業所っていう場があるよ、と教えてもらい、たまたま土曜日に開所している、西区の作業所にボランティアしていたのがはじめでした。そこで、メンバーさんと呼ばれている、精神障がい者の利用者との出会いですっかり精神障がい者の世界に挽き込まれてしまいました。当時その団体の役員会議なども、時計を見ると夜中の1時というような、熱い議論が続き、精神障がい者を支える市民のその熱に圧倒されたの�
�よい経験でした。
都筑ハーベストの会は、2001年に立ち上がりましたが、仲町台の地区センターで10名の設立総会でした。最初2年近くは拠点がなかったので、週末に仲町台駅集合で、そこから、300坪ほどの畑まで行き、農作業して昼ごはんを食べて解散というをするという日々でした。都筑区に知り合いもおらず、精神障がい者が夏の炎天下で畑作業などできるかなど考えながら仲間集めに懸命でした。現在はセンター南駅近辺を中心に、就労継続支援B型事業所 都筑ハーベスト、都筑区生活支援センターこころ野、グループホーム3 カ所などを運営しています。今年、青葉区寺家町の耕作放棄地の谷戸田で手作業の農を行う地域活動支援センターを立ち上げ中です。これまで、本当に、色々な地域の人たちに支えられて続けてこれたと感謝しています。

『佐々木さんとの出会いは衝撃的(聞き手:岩室晶子)』
私(岩室)は2003年頃都筑区のウエブサイト「つづき交流ステーション」のメンバーで、取材先を探していました。都筑区民まつりの会場で、都筑ハーベストという福祉作業所が元気に野菜を売っていて、声をかけてみたんです。そしたら佐々木さんが「いつでも取材にどうぞ」といってくれました。それがきっかけで畑にいくようになりました。
あるとき、畑にもっと地域の人たちにはいってもらいたい、と佐々木さんに聞いて、畑の芋を使って焼酎をつくるプロジェクトを考え、地域の酒屋さんを巻き込んで、あっという間に都筑の芋焼酎「夢のつづき」が生まれました。そのスピード感はすごかった。合意形成までに時間がかかる普通の福祉施設ではできないと思います。トップが佐々木さんだからできたんだと思います。サツマイモを鹿児島に送って、焼酎になるのが待ちきれず、視察と称して、私たち外野とハーベストのスタッフ、メンバーさん、酒屋さんという普段はあまり交流のないメンバーが一緒に鹿児島をツアーしたんです。ツアーはとても楽しかったです。

『六本木のサラリーマンと都筑の畑のNPO理事長、アンバランスこそバランス!』
最近の働き方は、「おはようございます」といって、パソコン立ち上げ、仕事をする、という環境で、個々仕事に引きこもってしまいがちです。どちらかというと、内にこもる会社の場と、都筑ハーベストの開放的な畑と人とのふれあいの場、両面があることで、私自身のバランスもとれているようです。人生、やりたいことをやることが一番ですよ。私も、スイッチを切り替えて、会社の仕事も圧縮し、時間をつくるようにならざるを得ない生活を送っています。会社は定年がありますが、NPOはじめライフ不ワークは一生取り組めると思います

『つきることのない、これからの夢』
さきほど、青葉区寺家ふるさと村で米作りのお話をしましたが、その田んぼの近くに、50坪の空き地があり、大家さんと交渉中で、そこにみんなで蔵を建てたいと思っているんです。自分たちが生きてきた時代に多くのものを失ったと思います。農山村の暮らし、風景、古民家。。そのひとつとして、蔵を、みんなで、木と竹で骨格をつくり、土壁をみなで塗り固める。蔵は、中で本がよめたり、お茶できたり、仲間と過ごしてもよいですが、一人孤独にこもれる場にもなります。現代社会で必要なもの。蔵作りもそのひとつとして、夢はふくらんでいくのですが、問題はノウハウがまったくないんです。どなたか建築家がいらっしゃったら、ぜひお手伝いいただきたいです。

最後に質問がありました。

質問(現役男性):私は現役でシステムエンジニアの仕事をしています。社員は外に出てきく必要がある、と会社のトップは言うけど、総論賛成確論反対みたいなことがあって、なかなか実現しないです。そんな中でも佐々木さんは飛び抜けていると思いますが、やれていない人たちに、アドバイスできるようなことはありませんか?

佐々木:日本の企業って色々な意味で非常にバリエーションが多岐にわたるノウハウをもっている、サラリーマンも活かせる場が多いと思います。たとえば、福祉の世界は、膨大な事務作業に、どちらかというと事務やITに作業苦手な人も多かったり、たとえばハーベストの会にしても、HPも更新できないとか、そんな状態です。企業や企業で培っているスキルを活かしていただけると、とてもやりがいがあると思いますよ。定年後であっても活躍の場はたくさんあることを知ってもらいたいです。

質問(NPO関係女性):2022年に住宅地の中にある、生産緑地の農地の契約切れ問題があります。住宅地の中の農地がなくなっていくという不安があります。そういうことを、解決していく方法はありますか?

佐々木:年を取っていくと、誰でもどこかに障がいをもつようになります。畑作業は、体にもこころにも良いので、福祉作業所に限らず、誰もが、高齢者みんなが日常生活のなかで「農」に関われる時代になると期待しています。人間が年老いても健康に自然とともに暮らせる時代になれば、このような問題も解決してしまうのではないでしょうか。

いつも瞳がキラキラしている佐々木さん。福祉に係わる人の中でも異色だと思います。さっそくこの日に知り合った方たちとのコラボの話が出ていました。無理そうなことも応援したくなるから不思議です。終了後の交流会は、ジモティおすすめのお店第2弾にいきました。こちらもものすごく盛り上がりました!

佐々木さんが理事長をつとめるNPO法人都筑ハーベストの会
http://www.tuduki.jp/nc/index.php