社長が地域に出ていったら、会社が変わった!

株式会社スリーハイ (横浜市都筑区東⼭⽥4丁⽬)の代表取締役、男澤さんにインタビュー(2019/10/24)

  • スリーハイって、どんな会社?
    産業⽤・⼯業⽤のヒーターの会社です。オーダーメイドで、温めたい場所に合ったヒーターをつくっています。
    たとえば、ジェットコースターなどのレールの凍結防⽌のためのヒーターや動物園や⽔族館の動物のためのヒーター、防犯カメラの曇り⽌めなど、⾝近なところでも活躍しています。 http://www.threehigh.co.jp/

Q:現在の雇⽤の状況を教えてください。

A:現在は全部で 34 名がスリーハイで働いています。正社員は 13 名、パートは 19 ⼈でそのうち契約社員は 2 名です。こちらに川崎市宮前区から引っ越してきた 2004年、最初は正社員とお掃除をしてくれるパートさんしかいませんでした。現在はパートのほとんどが地域の⽅で、徒歩あるいは⾃転⾞で通える⽅たちです。経費の交通費も節約できますし、みなさんが、ご近所チームでシフトを⼯夫してもらえて、とても助かっています。

Q:地域の⽅たちの雇⽤はどうして⽣まれたのですか?

A:地域のことが知りたくて、勉強会に参加したときに NPO の⽅と知り合い、東⼭⽥のコミュニティハウス(以下コミハ)の館⻑さんを紹介してもらいました。その場ですぐに電話して繋いでくれたので、さっそく次の⽇コミハにいってみたら、中学校の中にあり、校⻑先⽣や PTA の代表の⽅ともすぐに知り合うことができ、ついついコミハに通ってしまいました。その流れで、なにか CSR で出来ることはないかと地域のお祭りに参加したり。今度は⼩学校のPTA の⽅と知り合い、東⼭⽥エリアの⼯場⾒学などをする「こどもまち探検」*1 という企画が⽣まれました。そこから、地域の PTA のお⺟さんたちと知り合い、会社にパートで来てもらうことになりました。

最初は 1 ⼈の⽅がパートに⼊ってくれて、そうしたら、その⽅から適任の⽅を紹介してもらえるようになり、どんどん広がっていきました。それまでは、ハローワークに出したり、新聞の折り込み広告に 1 回 6 万〜10 万くらいかけて、募集記事を出してパートを探していたのですが、そんなことをしなくてもよい⽅たちが来てくれるようになり、地域貢献以上のフィードバックを感じています。
3 年前からパートを増やしました。働き⽅改⾰で残業に制限があるので、パートさんが短時間でも補ってくれることが、今後ますます必要になってきます。

Q:たくさんの CSR 活動をしているように⾒えますが、会社にとってはどんなメリットがあるのですか?また社員の⽅はどのように感じているのでしょう。

A:最初は社員も「なんで仕事以外にこんなことをしなくちゃいけないのか?」という、はてなマークが浮かんでいたと思います。でも地域の⼈とやりとりで、確実にコミュニケーション能⼒が⾼まるんです。社員教育にとてもよいのです。本当に多様な⽅がいて、多様な考え⽅を知ることができますから。
実際に売り上げにもつながっているんですよ。学校⾒学に来た⼩学⽣の保護者の⽅から、オーダーがあったり。思いがけないところから商売にもつながっていくんですよね。

Q:それにしても横浜市のまち普請*2 にも地域のチームで応募したり、その流れで⼀般社団法⼈をつくってしまったり。さらに⼯場の 1F をカフェ*3にしてしまったり。本業は⼤丈夫なのかと⼼配になりますが。

A:まち普請に応募して、地域の防災マップをつくり、⼯場地帯を地域のみなさんと⼀緒に⾒える化しました。ここは、⼯場と住宅がごちゃまぜになっている準⼯業地域なので、それまでは、⼯場と地域住⺠の中につながりがなく、住⺠からの⾳など⼯場に対する苦情があったり、逆に⼯場敷地に不法投棄があって⼯場も困っていたりしたんです。
だから⼯場が撤退して新しく住宅が⽴つと聞くと、当初は⼼配になったものですが、いまは、また新しい⽅たちと知り合えるなーと楽しみになるくらいです。

地元の⼩学校のこどもたちを毎年⼯場⾒学に受け⼊れる「こどもまち探検」のおかげで、こどもから保護者へと会社のことが伝えられて、きっと身近に感じてもらっているはずです。カフェは社員⾷堂もかねているんですよ。このあたりはお店がほぼなくて、コンビニもないし、ランチタイムは本当に困ります。ちょっとお茶できて、いろいろ使えるコミュニティカフェがあったらいいなと思い、新しく⼯場を増設するときに、思いきってつくることにしました。
⼯場の1F なので、いつも社員がなにかしらカフェ内で⾃社製品の作業をしているんですよ。地元の⽅にも使ってもらって新しいコミュニティが⽣まれています。カフェは実際問題⾚字経営でまだまだなのですが・・・。ぜひ気軽に寄ってもらいたいです。

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こどもまち探検*1
→2013年よりスタート。東山田準工業地域を練り歩く町工場めぐり。大きな工場見学と違い、間近で職人の作業を見せることで、こどもたちの職業の選択を拡げたいと思いで現在も実施中。
現在は東山田小学校、山田小学校の2校。参加企業は16社で年々増えている。

まち普請*2
→ヨコハマ市民まち普請事業。市民の皆さんの、地域の問題を解決したい、地域の魅力をもっと高めたい、という思いを実現するための施設整備に対して支援・助成を行う事業。

⼯場の 1F のカフェ*3
→新しくスリーハイの工場をつくるときに、1Fをカフェにしました。地域の人の交流の場になっています。
工場の中にあるカフェ「DEN」http://den.yokohama/

歩いていける会社で働くよさを実感しています

株式会社スリーハイでパートリーダーとして働いている説田⿇起⼦さんにインタビュー。説田⿇起⼦さんは40 代で家族構成 4 ⼈(夫、⾼ 3、⾼ 1、中 1のこども3人)。スリーハイまで、徒歩 10 分の距離に暮らす。

Q:これまでにどんなお仕事の経験がありましたか?

A:独⾝のときには会社の事務職として働き、電⾞通勤していました。結婚して⼦どもが⽣まれたとき、退職しました。その後主人の転勤による引っ越しと、3 ⼈の⼦育てもあり、仕事につくことがなかなかできませんでした。
最初に共通の趣味の友人から、スリーハイで働いてみない?と声をかけられて、働き始めました。

Q:ひさしぶりの仕事に不安はありませんでしたか?

A:独⾝の仕事時代から 14 年もブランクがありましたので、ひさしぶりの仕事でもちろん不安でした。でも信頼できるママ友からの紹介でしたし、いってみると社員の⽅たちがとてもていねいに教えてくれて。同年代のパートさんもいたので、思った不安はすぐに解消されました。

働き始めたとき、⼀番⼼配したのは、こどもたちの反応でした。主⼈はまだ単⾝赴任していたので(現在は戻っている)、家を空けることの不安もありました。でも実はパートに出ようと思い、いくつか求⼈広告を知って、応募したのですが、⾃分の思っている職場と違い、採⽤に結びつかなくて、がっかりしていたんです。そんなことを家で⼦どもたちに話していましたので、スリーハイに採⽤されたのを知ったら、とても喜んでくれました。いちばん喜んでくれたのは⼩学⽣の娘でした。まち探検でスリーハイにいったことがあったので、うれしかったのだと思います。

Q:実際に働いてみて、どうですか?

A:今は週 3 ⽇くらいのペースで働いています。社員さん、パートさん共々、みなさん親切で雰囲気がよいです。いま、パートリーダーをしていますが、私がはいった 3 年前からパートさんは 1⼈も辞めていません。男澤社⻑から「ある程度はおまかせします」と⾔われ、⼈が⾜りないときに私の紹介で社⻑の⾯接もなく、採⽤。⼈⼿が⾜りないときに期間限定でお⼿伝いしてもらうことが多いのですが、そのままパートとして働いてもらう⽅も多いです。

私は今、シフト管理などや、みなさんからの意⾒をまとめる⽴場にあって責任はありますが、やりがいも感じています。パートさんにはたくさん働きたい⼈と無理なく少し働きたい⼈がいますので、パートみんなで調整しています。

Q:⾃宅から近いところで働くよさってなんですか?

A:勤務時間は 9 時〜16 時半が基本。納期が迫っていて、急ぎのものがある場合は、すこし延びることもありますが、だからといって帰りづらい雰囲気を感じたことはありません。

たとえば、急なこどもの病気などで学校から呼び出されても、事情を話してすぐにいくことができています。会社から学校が近く、たとえば災害などあってもすぐに迎えにいけるから、安⼼できます。スリーハイの中でみなさんが共通に思っていることとして、お⼦さん、家族あっての仕事だから、という家族を優先できる雰囲気があります。そのことをとてもありがたく思います。

また、パートさんは地域の近所の⼈たちなので、いろいろな情報交換もできて、それも⼤きなメリットです。たとえば、おいしいパン屋さんとかランチできるところとか、そういうのもあるんですが、いちばん⼤きいのは病院情報ですね。どこの病院がよいよ、とか、⽣の情報は本当に助かります。私はずっと転勤族の妻だったので、なかなか地域情報が得られない時期がありました。地域の仕事を通して、友だちができるって、うれしいです。

Q:これからもお仕事を続けていきたいですか?

A:はい!できればずっと仕事を続けていきたいです!歩いていける会社で働くことのよさを実感しています。

横浜市立大学教員地域貢献活動支援事業(協働型)として、横浜市政策局男女共同参画推進課との協働事業の一環として実施しています。
https://www.yokohama-cu.ac.jp/ytog/contribution/research/contribution/R1list.html